そのおじいさんは今から20年前・・・この家に引っ越してきたんじゃ・・・

「そのときは二人暮らしでのぉ・・・たしかばあさんと住んでおった・・・」

「ああ・・・暖かいのぉ」

「おじいさん・・・何かお入れいたしましょうか?」

「いや・・・いまは少しこうしておきたいのじゃ・・・」

おじいさんは言った。

おじいさんは焚き火の前に座り・・・目を開けたり閉じたりしている。おばあさんは家の中で編み物・・・冬用のセーターを編んでいる様だ。

この二人の老夫婦は仲がいいと評判で、そのせいか
いつも何かももってきてくれる人が居た。

「こんにちはぁ〜煮物もってきましたぁ〜」

「まぁこれはよく煮えて美味しそうな煮物だねぇ・・・ありがとうございます。」

おばあさんは軽くおじぎをし、その夜の晩御飯に使うことにした。

庭で焚き火に当たるおじいさんもようやく腹がへったようで部屋へもどってきた。

ばあさんはご飯を出した。メニューはごはんとみそしる、煮物、あじの開きだ。煮物のおかげで豪華なメニューとなった。

ご飯を早く食べたおじいさんは焚き火を心配そうに見ていた。

「どうしたんですか?おじいさん。火ばかりみて・・・」

「あの炎が消えたら・・・ワシも終わるような気がしてのぉ。」

おばあさんはニコッとわらった。

「大丈夫ですよ。おじいさん・・・ほら・・・あんなに大きいじゃないですか。私たちはまだまだですねぇ。」

20年後、この老夫婦は死んでもこの炎をみつづけている。

コメント